大判例

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広島高等裁判所松江支部 昭和32年(う)117号 判決

一、被告人は犯行前日に雇主から金三千円を受取り倉吉市内の二、三ケ所で飲酒したが、犯行当時にもなお千数百円の所持金があつて、強いて他人から金員を奪取しなくても飲酒代位には困つていなかつたこと、

一、被告人と龝山とは当日初めて知合つた間柄で、従来交友関係はなく、突然街路上で通行人から金員を強取することを共謀する程密接な間柄でもなく、またその必要があつたと認められる事情は少しもなかつたこと、

一、被告人は被害者中根の処置を龝山に一任し、一たん現場を立去り街道をブラブラしているうち、たまたままた龝山及び被害者に、ついで小谷博美に出会し、四人連となつたようであるが被告人が立去つた後龝山が被害者から強取した金員の分前を右出会後同人から貰つたことのないのはもちろん、同人が被害者から金員を奪取したかどうかについて何等かの関心を示した形跡すらなく、龝山及び小谷らから誘われるままに被害者と共に右小谷方に行つて泊つたもので、龝山が被害者から金品を奪取したことは警察の取調を受けるまで全然知らなかつたこと、

などが窺われ、又一方において、被害者中根真太郎は当日初めて倉吉市に来たもので同市内の地理に通ぜず、しかも被告人等から暴行を受けるまでに数ケ所で相当多量に飲酒して酩酊していたので、被害前後の状況についても記憶の不確かなものがあり、当夜初めての土地で未知の者から暴行を受けたので恐怖と興奮の余り、被告人等の行動について相当に誤解もあり、被害前後の事情についても稍混乱した供述をしたものと認められる形跡がある。

これらの点を併せ考え、前記被告人の検察官に対する供述調書の内容を検討するときは、該供述中の強盗の犯意及び被告人と龝山とが犯意を共通にしたとの点に関する供述部分は、犯行当時の被告人の行動や前後の情況に照らし、かなり不自然かつ不合理と思われるところがあつて、そのまま全面的に真実と認めることはできない。右はむしろ被告人が原審公判廷において供述するように、被告人は酒気に乗じて通りかかりの中根に云いがかりをつけて殴打し、これを喧嘩と見て被告人に加勢する龝山とともに更に殴打暴行したのに過ぎないもので、金品奪取の目的はなかつたとするのが、諸般の状況によつて容易に首肯できるのである。

(裁判長裁判官 三宅芳郎 裁判官 藤田哲夫 裁判官 竹島義郎)

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